ヒップホップ 韓国 スロット

LOVE YOURSELF 承 'Her'

もう2月になってしまいました。

とてもいい感じのアルバムを紹介しましょう。

※ここから先は私の主観で書いています。もしBTSの熱狂的ファンであったりしたら間違ってることも書くかもしれません。そうしたら教えてくださいね。

 

BTS - LOVE YOURSELF 承 'Her'

最近日本でもよく名前を耳にしますよね。ここ数年で急激に勢力を伸ばしてる7人組です。つい最近まではBIGBANGに変わって韓国歌謡界を引っ張っていくのはEXOになるのではと各所で言われていましたが、現在の勢いはBIGBANGを凌ぐものがあります。

このグループ、デビューは2013年らしいのですが、それを考えるとたった四年で韓国歌謡界の頂点をしっかり見据えているポジションにまで登りつめているということになります。ていうかもう頂上にいるのかもしれません。

 

自分が初めて聴いた彼らの楽曲はこれです

この頃はまた活きのいいヒップホップユニットが出てきて元気な曲をやってるなぁくらいにしか思いませんでした。印象も割と薄かったです。

それでもヒップホップユニットの中では割と聴けるラップをしてるなぁ(本当にすいません)と思ったので、それから新曲のPVが出たらチェックする程度でした。

 

彼らのファン(ARMYというそうです)の方ならご存知かもしれませんが、彼らの魅力の一つにその’コンセプチュアルさ’があるそうです。これまでには’青春三部作’と題して"School"、"花様年華"、"WINGS"というアルバムをリリースし、そのミュージックビデオの中から繋がりや伏線を発見するのもBTSの魅力の一つだそうです。

 

少し前で書いたように、私も彼らの楽曲は出ればチェックする方だったのですが、当時私はその’コンセプチュアルさ’が煩わしいなと考えていました。(すいません本当に)

コンセプトに縛られ、伸び伸びとラップが出来ない3人のラッパーラインを見て(何度も言いますが私の主観です)折角の青春時代に偽りの青春時代を演じさせられて、可哀想だなぁと思うこともありました。コンセプトに走るのは表現が命のヴォーカルラインの実力不足を補うためなのではないかと考えたこともありました。よく考えたら自由すぎるBIGBANGなんて聴いてたらそう思ってしまうのかもしれません。しかし遅ればせながらこのアルバムを聴いて、彼らの積み重ねてきたものが花開いたように感じました。

 

相変わらずクソ長い前置きでした。

ちなみにアルバムタイトルの’承’ですが、 

: 「穏健」に作るべきであるとし、突飛、露骨な句であったり、反対に平板であったりすることは避けるように主張している。

とあります。ちなみに承と残りの3ピースはこのアルバムのティーザー的立ち位置の'Highlight Reels'という映像作品に散りばめられているそうです。こちらは未聴なのでこの記事を書き終わったら見ます。

’承’に則って、このアルバムは非常に精密な曲配置がなされています。タイトル曲『DNA』は2曲目に配置されています。

 

が、一曲目はジミンのソロ『serendipity

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イントロの位置ですね。ジミンの高音はさながら昔のジャスティン・ティンバーレイクのように甘くて切ない感じ。JTの力強さ、セクシーさの代わりに純真さと上品さがあって最高です。

自分は一つ前のアルバム『Wings』と今作しかちゃんと聴いてないんですけど、その前作のイントロと比較すると全然違う入り方ですね。(後述します。にしてもBTSの良い所はイントロという位置付けの曲もしっかりと作り込み、映像作品化してるとこ。これだけ丁寧ならファンも増えるわけだ。)非常に甘くてジミンの魅力を存分に味わうことができます。

で、次がシングルカットの『DNA』

www.youtube.comこの曲の映像はこれまでのコンセプチュアルさは控えめに、彼らの躍動的なダンスや表情に集中して見ることができます。あくまで伏線探しは熱狂的なファンのためのおまけ要素でそれを知ることができたらより彼らを好きになるんじゃないか位の所でしょう。"DNA"というだけあって、すでに彼ら印の遺伝子はこのアルバムにしっかりと組み込まれています。

この曲はいわゆる所の’ヒットを狙った’曲であり、冒頭のキャッチーな口笛からロックテイストに始まり、エレクトロ的なサビまで駆け抜けます。

"DOPE"で見せてくれたような元気溌剌な彼らとはまた違った、静と動を正しく使った"血液"のような連携をこの楽曲では見ることができます。こういったことができるのはこれまでの活動で培った表現力の賜物でしょう。

個人的にこの曲のハイライトは冒頭のV。

他のヴォーカルラインのメンバーが持っていない低音混じりのセクシーな声を持っている彼の表情、声がこれから流れ出す血液と遺伝子の胎動を知らせてくれます。

次の曲は『Best Of Me』も、聴き処満載です。個人的なベストはラッパーラインの二人の歌うようなパート。ヴォーカルラインのそれと聴き間違えてしまうくらい丁寧に歌い上げながらラップしています。

『Dimple』は、ヴォーカルラインだけの曲。サビの中毒性が半端ないです。

自分はあんまりアイドルグループのヴォーカルにハマることはないんですけど、BTSの4人はそれぞれ個性が強くて安心して聴いてられます。ラップがなくても聴けるというか

Pied Piper』、言うなればチンドン屋ハーメルンの笛吹き男って感じでしょうか。

要するにこっちへおいでよ、と。俺らといれば楽しいよみたいな曲。頭のRM先生のヴァースがなんかイケメンで好きです。SUGAとJ-HOPEのヴァースがくっ付いてるけどそれぞれ個人の味が出ててよき

続く『Mic Drop』は、前作の『BTS CYPHER 4』の続編的立ち位置というかBTS CYPHERシリーズの締め的なアレなのかな?

ハードでかっこいいです。特に頭のJ-HOPE

間の使い方が完璧です。流行を抑えながらもしっかりと基本ができてるラップ。

J-HOPEってBTSになるまではダンス一筋なんですね。これほんとすごいよ。

シュガやRM先生はアンダーグラウンドでの活動経歴があるタイプで、当たり前だけど上手い。自分はヒップホップ警察なのでこの辺めちゃめちゃ厳しく聴いちゃうんですよ。アイドルグループのラップラインはグループの心臓部(と勝手に思ってます)なので下手な奴は一発でわかる だけどJ-HOPEは声の使い方はフローの使い方が抜群にうまくて、ラップラインの二人を喰ってる曲も多いです。

 

次の『GO GO』、めっちゃ癖になります。よろよろよろやっ!

要約すると人生浪費してなんぼ、金を使って楽しめと。

特徴的なサビで連呼されるフレーズは知ってる人も多いと思いますが

You

Only

Live

Once

(一度きりの人生、今をしっかり生きろ)

の意だと思います。

 

で、『Outro』。ミンユンギがシカゴで作ったらしいです。めっちゃ天才。

ATCQのLove Momentに入ってそう。

 

まとめます。前作『Wings』はイントロからJ-HOPEの悲痛な叫びから入ります。愛に溺れた人生を'Evil'と称して歌い上げます。また、他のメンバーのソロも多くは’贖罪’をテーマにしています。でもJ-HOPEはイントロでやっちゃったからストレートな母への感謝がソロのテーマになっています。『Wings』はコンセプトアルバムではないと思います。血汗涙からのソロ曲連打の流れは特に狙ったものではないでしょう。このアルバムでは彼らの’スター’になるための試練、苦痛、罪の意識がまとわりついてはいますが。"Not Today"と"Spring Day"をパッケージした外伝も今作ほどの意図は見て取れませんでした。

今作のイントロ『Serendipity』には思わぬものの発見、とかそういった意味合いがあったと思います。でも、偶然じゃないよと。

何が?ってなると思いますが、これはジミンの愛する人に送った言葉でしょう。

でも女の人ではありませんよ。多分BTSのメンバー達のことです。(そんなの分かるわ!って感じですよね、笑) 

 

너는 나 나는 너 (君は僕、僕は君)

 

ってフレーズがあります。ジコのソロと同じフレーズです

このフレーズからもメンバーと共同体化してるのを感じました

 

続く『DNA』でも、出会いが偶然じゃないと語っています。遺伝子単位だぞと。このアルバムの特徴が顕著に出てる楽曲だと思います。

ポイントはサビ後のしゅがとボーカルラインの掛け合い。今作はとてもこういった"誰がどこを歌っているのかわかりにくい"箇所が意図的に仕組まれていると感じます。これは彼らが血液のようにお互い溶け合っていることを表現しているのではないかと感じてしまいました。ラブ・ソング的な歌詞を表面にまとわせながらも、その血肉は彼ら自身に彼ら自身が向けている愛情なのかもしれません。ダブルミーニング的な

で、次の曲でもRMとシュガの二人のヴァースはボーカルラインが普通やるところを担当してます。シュガのパートなんて特に最初の歌う箇所は普通だったら4人の誰かがやってるんじゃないですかね

完全に全員が一つの集合体になってるように感覚です。俺たちは7人で一人だぞって感じ??? 『Pied Piper』では彼らが視聴者すら溶け込ませようとしているのを感じました。クソ巨大な遺伝子細胞になるでしょう

『Wings』の『BTS CYPHER 4』ではフックで『I LOVE MYSELF』と言ってました。動脈的なラップパートではセルフボースティングしていましたが、RMのソロでは"I Wish I could Love Myself"とありました。やっぱりWingsは自分を愛するための一歩手前の段階を表してるんすかね。そのための贖罪や懺悔でしょうか、

 

そんな愛を探していたRM先生ですが、今作の『Outro』ではどうでしょうか。

The World is a complex

We was lookin for love

とあります。お!?過去形になってますね!しかも'We'ですよ!

But I found myself

The whole new myself

とも言ってますね。全く新しい自分を見つけてそこに愛を見出すことを高らかに神に誓っています。

この曲におけるHerは、Tearとのライミングでしか作用してません。3人それぞれはひょっとしたらメンバーに向けた愛情をそれぞれ話してるのかもしれませんね、そういう見方も良いんでない

安堵して終わりまで一緒だというRM、

仮面を外せないとあんま素直になれないけど愛は深いしゅが

感受性豊かに歓びと期待を表現するJ-HOPE

そんな角度もあっていいと思います

 

このアウトロも温かさを保ちながらもしっかりとしたビートでラップされています。

動脈と静脈のように、脈打ちながらも激しすぎず、程よい速さで(誰かの左腕的な)織りなされるアルバムでした。(これらを考えると『SEA』は悲しすぎるので隠しトラックになったのもなんとなくわかります)

 

ソロであっても、ボーカルライン、ラッパーラインだけであっても、今作ではBTSらしさがどの曲でも見て取れます。それは彼ら自身が互いに愛し合ってるからかもしれません。表現するものが一人でもそこに重なってるぞと。そんなアルバムでした。その翼が黒かろうが白かろうが彼らは7人で一つの翼なのかもしれませんね。(クサい)